リレー随想

2018/06/18
No.182 2018年7月号  2017年卒 日野原賢汰
「家族の一員の野良猫」

我が家に野良猫が遊びに来始めたのは私が大学入学してすぐのことだった。
大きくて全身茶色の猫で、いつも1匹でやって来た。
最初は二階のベランダで日向ぼっこしに来る程度で、母は洗濯の邪魔だとブツクサ文句を言っていた。正直私は猫が好きなので密かに遊びに来るのを楽しみにしていた。

そんな状況が2〜3ヶ月続き、ある日部活から帰って来ると何やら二階が騒がしくなっており駆けつけてみると、ベランダに子猫が3匹じゃれていた。いつのまにかベランダで子作りをされていたのである。さらに衝撃だったのは、キャンプ用品を置いてある一角の奥から鳥の死骸が出てきたのだ。知らぬ間に茶色の猫は妊娠し子供も産んでいた。その母猫が狩ってきたのか拾って来たかは知らないが、鳥はもうすでに大分食べ尽くされていた。
そんなまさか!の事態が起きたことに我が家は大混乱。まずはベランダを片付け、死骸も処分した。子猫のままベランダから出したらカラスの餌になりかねないとのことで、子猫3匹はもう少し大きくなるまでベランダ内で面倒をみることになった。
キャットフードと水を与え、母猫がもう変なものを持ってこないようこまめに注意を払う。また2〜3ヶ月経ち、子猫たちをベランダ生活から卒業させ、母猫も家にもう来ないようにした。

それから3年、私が就職活動をしている頃、どこか見覚えのある猫が自宅の庭に遊びに来ているではないか。3年前、ベランダにいた子猫の1匹が大きくなって戻って来たのだ。
その猫は毎日我が家を訪れ、家族に非常に懐いてる。
今では自由に家の中に出入りし、家族の一員として平和に過ごしている。

私は昨年から社会人となり、1年間で広島、神戸、大阪、和歌山、横浜、千葉と各地で研修をした。配属先は北海道。見知らぬ土地でもどうにか生き抜いている。
ゴールデンウィークに実家に帰省した時、あの猫はもはや家に慣れ親しみ、寝泊まりも家の中でするほど馴染んでいた。私がリビングに座ると近寄って来て、隣に座ってくれた。ちゃんとしたペットではないが、家族にとっても癒しの存在であることには違いない。
そして札幌に帰るとき、お盆まで猫に会えない寂しさはあったが、次の帰省の楽しみにもなった。
茶色の猫が遊びに来始めて、最初は邪魔くさがっていた母は今や子供の猫のお世話がかりになっている。祖母も今までは実家でただテレビを見る毎日だったが、猫と戯れ始めてから以前よりも元気になった気がする。父は猫と一番仲が良く、良く甘噛みされて手足が傷だらけになっているが、非常に楽しそうに接している。

学生時代の私からしたら、今ではこんなにも猫が我が家の生活に欠かせない存在になっているとは思いもよらなかった。
これからも我が家は猫に癒されて生活するのだろう。私もこれからの長い社会人生活の中で、まずはお盆休みに猫に癒されるのを楽しみにしている。
仕事でたくさん苦労することもあるだろうが、どこかしらでリラックスできる機会があれば何とか乗り切れると思う。

思いがけないことが意外な結果をもたらすのだなって感じたエピソード。

最後にこの随想を執筆するにあたって、私に指名してくれた会社の同期の野木君に感謝申し上げると共に、提出がギリギリになってしまったことをご容赦ください。
(北海道札幌市在住)
2018/05/08
No.181 2018年6月号  2017年卒 野木康士郎
「偶然は縁を生む」

 高崎経済大学を卒業して約一年経った。社会人二年目を向かえ、正式に配属されたものの、右も左もわからない状況下で毎日仕事をしている。毎日電車で通勤しているが、楽しそうにしている大学生らしき集団を見ると、うらやましく思うときもある。今の楽しみは、コンビニで買ってきた餃子をつまみにビールを飲むことぐらいである。

 という暗い話はさておき、最近本屋に行くことが多くなった。今の時代、通販で本屋に行かなくても本は買える。しかも、どんな内容かレビューで評価を確認することができ、買って「つまらなかった」という失敗をすることも少なくなった。しかし、通販での本探しは検索をかけた情報しか得られない。しかもレビューを確認することで、本の中身がある程度わかってしまうため、ワクワク度が半減してしまう。
それと違って、本屋に行く際は何かしら興味のあるジャンルを見に行くが、中を歩いているとオススメのコーナーなどで興味惹かれるものがあることもある。その場で偶然に見つけたその本は事前のレビュー評価の先入観もなく純粋に手に取れる。中を読んでみると、面白かったり、つまらなかったりあるいは新しい発見があったりする。本屋だとそういう経験ができるので、面白い。
 通販だとわざわざ本屋に行かなくとも自分の欲しい本をすぐに買えて便利であるが、本屋特有の偶然の出会いが奪われてしまっている。

 適切な例かは定かではないが、恋愛においてもそうであると思う。そういう系のアプリで顔や年齢という少ない情報で検索をかけて取捨選択せず、堂々と街コンや合コンで複数人の人と出会った方いいと個人的には思う。恋愛につながることもあれば、そういう関係にならなくとも、仕事で繋がったり、人脈が増えるかもしれない。私自身、偶然同じ時を過ごしたことで何かの縁に繋がったことも実際ある。
 一人一台スマホやタブレットを持っている時代だ。容易に検索できるが、検索することで自分の欲しい物や情報を手に入れることができる。しかし、そこで取捨選択してしまうと偶然の出会いがなくなってしまう。それはとてももったいない事だと個人的に思う。

 偶然にも高崎経済大学に入学し、4年間過ごした。たまに高崎経済大学に入学していなかったらどうだったのだろうかと考える時がある。もしかしたら、あの4年間よりさらに楽しいことがあったかもしれないが、硬式野球部で真剣に野球に取り組めたことや、体育会本部の代表幹事をさせていただいたこともこれはこれで良かったのかもしれない。部活や体育会本部を通じて、多くの仲間や先輩方と出会うことが出来た。
 
 そして私は今、大学の先輩方が勤めていらっしゃる会社で働いている。高崎経済大学に入っていなかったから、今の会社に入っていないだろう。これも何かの縁なのかもしれない。偶然に起きたこと、出会ったことが縁を生む。これから先、様々な出会いを大切にして人生を楽しいものにしていきたいと思う。

 No.178で随筆された神戸大先輩と前回随筆された大橋大先輩にご紹介いただきまして、今回書かせていただきました。このような機会を設けていただきまして感謝しております。これを書いていることも何かの縁であると思います。関わることがございましたら、その時はよろしくお願い致します。

 稚拙な文章でしたが、最後まで御覧いただきましてありがとうございました。次回のランナーは会社の私の同期で硬式庭球部の主将を務めておりました、日野原くんにバトンタッチしようと思います。生まれも育ちも群馬県ですが、現在は… 乞うご期待!
(東京都板橋区在住)

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