リレー随想

2019/12/20
No.198 2020年1月号 2017年卒 北川 徹
「懐」

この記事が掲載される頃は冬真っ盛り。北海道の冬も厳しいですが、群馬の冬もまた厳しいものです。美しい上毛三山から吹き降りる空っ風は、自転車を常用していた私にはとても辛いものでした。
その土地の気候はその土地の人々の性格を左右するのでしょうか。初めて群馬の方と接した際の第一印象は、正直怖かったです。皆声が大きく、口調がきつい気がしました。また、女性が強い。しかし、話してみると皆暖かく、面倒見の良い方々ばかりでした。私は農産物の直売所でアルバイトをしていましたが、農家さんや他の店員さんは、私をとても気遣ってくれました。特にパートさんには、私の群馬における母として、相談に乗ってもらったことも多々あり、精神的な心の支えとなってくれました。

 高崎は、古くは宿場町として栄え、人の往来により発展した町です。一見保守的に見える群馬県ですが、外来の文化を受け入れる懐の深さがあると感じました。高崎経済大学も、県外からの入学者が多数を占めるにも関わらず、高崎市は投資を惜しまず、地域の住民にも受け入れてもらっている。短期的な目線では、直接的な利益につながらないようなことでも、長期的に考えれば利益をもたらすということを理解しているのではないかと考えます。それゆえか、現在でも高崎市は経済力を持つとともに、文化度を兼ね備えています。

 そんな高崎及び群馬に後ろ髪を引かれつつUターン就職をした私も、気づけば社会人3年目を迎えました。地方公務員として、私立幼稚園の所管部局で勤務しております。教職員の皆さんが幼稚園の運営に不安を抱えることなく教育に専念してもらうことが理想ですが、複雑化する制度と私の力不足により、教職員の皆さんに負担を強いてしまうことが多々あります。

 幼児教育における最近のトピックスとして、昨年10月から施行された幼児教育無償化があります。「便乗値上げ」等マイナスな面がクローズアップされている印象を受けます。それについてのコメントは立場上差し控えますが、そもそも幼児教育の無償化とは、幼児教育の重要性を政府が認識し始めたことによるもの(とされています)です。
 幼児教育の効果に関する代表的な研究成果として、「ペリー就学前計画」があります。本計画は、1960年代のアメリカ・ミシガン州において、「質の高い幼児教育プログラム」に参加したグループと「参加しなかったグループ」を対象に、その後長期にわたり追跡調査を実施しているものです。質の高い幼児教育プログラムへの参加は、その後の「学校のよい成績」「より高い収入」などにつながっているとの結果が出ています。OECDでも、こうした研究成果を背景に、幼児教育の重要性に関する提言がなされているところです。
 教育に対する投資は、すぐに収益が出るわけではありません。特に幼児期の教育にあっては、十数年も先のこととなるでしょう。しかし、ノーベル経済学賞を受賞したヘックマン教授の研究結果によれば、子供の年齢が小さいうちほど収益率が高くなるとのことです。

 実は高崎の現在までの発展は、人々の懐の深さ・義理人情のおかげなのではないか、などと考え高崎を懐かしみながら、私と同じく北海道出身のUターン組である猫宮さんにバトンを渡したいと思います。
(札幌市在住)
2019/11/04
No.197 2019年12月号 2017年卒 高橋誠也
「ととのう」

すっかり秋めいた今日この頃。大学ではちょうど学校祭の時期でしょうか。

私は、学生の頃放送研究会に所属しており、この時期は学校祭にて放映する番組制作やステージのリハーサルなどで毎日忙しかったと記憶しております。

ところで、読者のみなさまは休日をどのようにお過ごしでしょうか。学生時代は毎日が日曜日のような気持ちでしたが、社会人にとって休日をどう過ごすかは次週を乗り越える上でも最も重要ですよね。

私が社会人になってから、毎週欠かさず行っていることがサウナです。今回のリレー随想にあたり、何か格好いいことでも書こうかと思ったのですが、特別何も思いつかなかったので私の好きなサウナについて少し書き綴りたいと思います。


北海道の山間部で生まれ育った私は、高経を卒業した後、就職を機にまた北海道に戻ってきました。

元々高経に入学する時から地元に戻ることは決めていたのですが、4年間の高崎生活はとても有意義であり、今でもテレビ番組やニュース等で高崎が(あるいは群馬が)取りあげられる度、楽しかった学生生活を思い出します。

社会人生活1年目は慌ただしく日々が過ぎ、モラトリアムをただひたすらに享受していたあの大学生活が懐かしく、学生に戻りたかった毎日。そんな中、地元でのちょっとした同窓会で高校時代の後輩にすすめられたのがサウナでした。

従来より温泉は大好きで、高崎にいた頃も各地の温泉地を巡っていましたが、サウナは全く入りませんでした。
サウナなんて熱いだけであり、ましてや平気な顔をして水風呂にざぶんと浸かるサウナ愛好者たちは新人類か何かだと思っていました。

その後輩曰く、サウナで充分暖まってから水風呂に入り、その行為を何度か繰り返すととても気持ちいいのだと。頭の中がスッキリするのだと。そのようなことを言っていました。


最初は全く信じられませんでしたが、元々温泉施設には頻繁に通っていたこともあり、まぁついでに入ってみるかと考え、近場のスーパー銭湯にて実践することにしました。

結果水風呂に入る勇気が無く断念。足まで浸かることは出来るのですがその先がどうしても冷たくて入ることが出来ませんでした。ただ、火照った身体を水で一気に冷やすことである種の爽快感を感じられ、また勢い良くざぶんと水風呂に浸かっている人生の諸先輩方が浮かべる恍惚とした表情を見ると、その境地に立つことが出来ないことが少し悔しくもあり、何度も何度も挑戦する内にいつしかサウナ中毒者となってしまった訳であります。

サウナと水風呂の温冷交互浴で得られる爽快感、一種のトランス状態に陥ることをサウナ界隈では「ととのう」と表現するらしいのですが、自分の中でこの「ととのう」ことは仕事でのモヤモヤ感や考え事などをスッキリとさせ、身も心もリフレッシュするための重要なルーティーンとなっております。

現在に至るまで身体の調子も崩さず仕事を続けられているのは、きっとサウナのお陰もあるのだろうと勝手に考えております(医学的根拠云々は置いといて)。

読者の方々の中で、もしサウナに入りたくなった方がいましたら幸いです。水風呂に入る前に汗を流して入って頂けるとさらに嬉しいです。

それでは、まるでサウナのように暑かった高崎の夏を思い出しつつ、同じく道民の北川君にバトンを渡したいと思います。
(北海道在住)

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