リレー随想

2025/04/28
No.260 2025年4月号 2018年卒 吉澤 建人
「故郷、群馬へ」

 みなさん、こんにちは。経済学部2017年度卒の吉澤建人と申します。同じ勤め先の、井上健二さんからバトンを受け取りました。
先日、群馬に帰郷した際に、当時所属していた体育会、サイクリング部のことを思い出しましたので、そのことについて投稿いたします。

 上毛三山を望む故郷、群馬。久しぶりに帰省し、青春時代を過ごした大学と、そこで打ち込んだサイクリングの日々を思い出す。あの頃、私の愛車はロードバイクだった。細いタイヤと軽いフレーム。風を切るように走る感覚が、何よりも好きだった。大学のサイクリング部に入部し、仲間たちと練習に明け暮れていたことを思い出す。

 練習コースは、大学周辺の山道。最初はきつかったけれど、少しずつ体力がつき、坂道を登れるようになった時の達成感は忘れられない。榛名山、赤城山、妙義山…。群馬の名峰を、自転車で駆け抜けた。

 決して綺麗ではない、油のにおいがする部室に集まり、今日のコースを検討する時間もまた、楽しかった。誰かが持ってきた地図を広げ、ルートを決め、補給食を分け合う。時には、先輩の武勇伝に耳を傾け、モチベーションを高めた。

 レースにも出場した。スタートラインに並び、緊張と興奮が入り混じる感覚。仲間たちの声援を背に、ペダルを力強く踏み込んだ。結果はどうあれ、全力を出し切った後の爽快感は格別だった。

 合宿も、忘れられない思い出だ。特に1年生の時の夏合宿は、今でも鮮明に覚えている。新潟をスタートし、日本海沿いを北上、佐渡島をフェリーで渡り一周し、再び新潟に戻り、金沢の粟津温泉を目指すという、1週間で1000キロにも及ぶ壮大な旅だった。キャンプ道具を自転車に積み、キャンプ場を転々としながらの行程は、まさに冒険だった。夜は、仲間と語り合い、親睦を深めた。時には、恋愛話で盛り上がり、時には、将来の夢を語り合った。

 卒業してからも、何度か群馬でサイクリングをした。かつての練習コースを走りながら、あの頃の情熱や友情を思い出す。風の匂い、土の感触、景色…。すべてが、懐かしく、愛おしい。

 群馬の自然の中で、自転車に乗っていた日々。それは、私の青春時代の、かけがえのない宝物だ。いつかまた、あの場所で、風を切って走りたいと思っている。
と、感傷に浸りながら、私も次の方へバトンを繋ぎたいと思います。
(東京都在住)
2025/03/25
No.259 2025年3月号 2003年卒 井上 健二
「そこがゴールではない」

 みなさん、こんにちは。井上健二と申します。年代は異なりますが、同じ勤め先であり、東京三扇会の活動も共にしている、穐本知哉さんからのバトンを受けて投稿いたします。

 先日、これまで何度か参加をさせていただいている「OBOGによる模擬面接会」へ、面接官として今年も参加をして参りました。
 高崎経済大学で開催される面接会へ向かうため、当日は新幹線に乗るはずでした。しかし、2月初旬の北陸地方での大雪の影響により、新幹線のダイヤは大幅に遅延していました。それだけではなく、東京駅のホームや改札口は、長野や新潟へスキーやスノーボード、温泉地などに向かうと思われる観光客で大混雑でした。そのため、予定を変更し、高崎線直通の上野東京ラインに乗りました。
 高崎線で向かうのは、学生の頃に就職活動を行っていたころ以来、20年以上も前になります。電車に揺られながら、事前に配布された実践さながらのエントリーシートを読み、参加する学生が志望されている業界や企業について情報収集すると共に、参加する予定の学生に想像を膨らせました。
 
 なんとか開始前ギリギリ間に合い、計4名の学生に対する面接官を担当しました。定型の「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」や、業界・企業の志望理由、困難な課題にチャレンジしたエピソードなど、学生のアピールに対して、私も深掘りの質問を重ねていきます。模擬面接が終了すると、面接官より学生へのフィードバックの時間となります。

 参加される学生の多くが、素直で真面目なところは例年受ける印象と変わりありませんが、年々、面接に向き合う姿勢や質問に対する受け答えの仕方に対策の跡が感じられるようになりました。面接を通じて、気付いたこと、改善した方が良い点などを社会人の視点から細かくアドバイスをしました。
「企業が求める人材とは?」「自分が働いている姿を想像できている?」・・・アドバイスを前向きに捉えてメモを取り、次に繋げようとする姿勢もあれば、思うように受け答えができなかったことに対して、落胆する表情も見受けられました。面接官である私と学生の世代の差は年々広がっていくばかりで、きちんと伝わっているかどうか一抹の不安がよぎります。

 面接会のすべてが終了し、帰りの新幹線に乗りながら一方的に会話を推し進めてしまった自分を反省しました。過去を振り返ってみても、氷河期末期の就職活動に対してほぼ無策で臨んでいた私。来年こそは、学生に細かいことは言わず、「受け身にならず、自信をもって相手に伝えてみよう。」とだけ言おう。と毎年思っています。そこがゴールではないのだから。

 都内もようやく春めいて来たどころか、初夏をも感じさせる陽気となってきました。みなさんにとって出会いと別れのシーズンでもあるところで、私も次の方へバトンを繋ぎたいと思います。
(東京都在住)

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