リレー随想

2022/05/03
No.225 2022年5月号 2015年卒 鈴木 楓
『経大卒』

佐藤初好さんからご紹介挙がりました2015年卒業の鈴木楓です。

『頑張り屋さん』だなんて…
そんな風に思ってくれてたんですね。嬉しい。
久々に連絡来て懐かしくなりましたよ〜
いつ、焼肉奢ってくれるんですか?(笑)

さて、私は大学卒業してから金融機関で内勤として働き、昨年の10月に退職。現在は、消防設備士として日々現場を駆けまわって点検業務をしています。

卒業してから、大学生の時とは違って生活リズムが変わり、月曜日から金曜日まで働いて働いて働いて…(笑)
バカ笑いすることも無くなったし、深夜まで起きてることも無くなって、同じことを繰り返す毎日…。
こんなこと言ったら働きたくなくなっちゃいますね(笑)

でもその分休日は外に出て飲んだりフェス行ってはしゃいだり♪
地元の友達に音楽仲間に、笑った顔見るだけで明日から仕事頑張ろう!って気持ちになれたから
今までなんとか辛いことも乗り越えて、気づけば30歳。。。

コロナになってから楽しみが無くなって
なんのために働いてるんだろう?
ばかり頭の中で彷徨って
みんなにも逢えなくて、ただ仕事と自宅の行ったり来たり…。
笑うこともないし感動することもないし
目の前の仕事と向き合うだけ。

早くコロナが落ち着いて、マスク取ってみんなでバカ笑いしたいですね。

私が元気がない時に、SNSを見て心配して電話をかけてきてくれたのが部活の後輩ちゃんです。
嬉しかったです。とても。

その時、本当に経大卒で良かったなって思いました。
青い春楽しんでたなって、
良い人達に恵まれてたなって。

会社でも経大卒で仲良くなった同期や先輩、お客さんともその話題で距離が縮んだり。
経大卒で得したことばかり(笑)
繋がりは大人になっても大事ですね。

色んなご縁もあって、現在、経大で働く職員さんとチャットモンチーのコピーバンドを組んでいます。
コロナに負けず、いつかライブできる日が来ると良いな。

みなさんにも経大卒で良かったって、これからも思い続けてほしいです。

ではでは、
バトンをお渡しする方のご紹介へといきましょう!
経大バンドのベースでもあり、私が所属する社会人バンドサークル『G.B.C』の中でNo. 1の優男こと井野翔紀先輩にバトンタッチ致します。
井野さん、夏のライブお互い頑張りましょうね!
(高崎市在住)
2022/03/25
No.224 2022年4月号 2011年卒 佐藤 初好
「夢か現(うつつ)か」

くったりと椅子にもたれ、目を閉じ、耳を澄ます。
煌めく湖面を小刻みに打つ、漣の音。
命を振り絞らんとする木の葉たちの、カサカサと揺れる音が、とても心地良い。
もうかれこれ1時間はこうしているだろうか。
外気温はマイナス3℃。
まだまだ寒い冬の、しかし、春の陽気をもほんのり感じさせる、そんな午後である。

ここは富士五湖のうちの1つ、山中湖の畔。
眼前に大きく聳え立つ巨峰も、今はその雪化粧を一層濃ゆくしている。
時折、水面を撫でる風が肌を刺すものの、
うすら開けた眼には、オレンジ色の柔らかな光が射し込んでくる。
日没まではまだまだ時間がありそうだ。どれ。

小さなツマミを回し、点火スイッチを押す。
カチッという音とともに、バーナーがゴーッと唸りをあげ、
上に乗ったコッヘルをこれでもかと加熱する。
よくもまぁこんなコンパクトなボディーから、そんなに威勢のいい炎を吐き出せたものだ。

食材の入ったクーラーボックスをのぞき込み、ピーマンと厚切りのベーコンを取り出す。
ピカピカに光る刃を緑の外皮に滑らせ、刻んでいく。
鉄板にベーコンを並べ、上からブラックペッパーと粗塩を振りかけ、焼き目をつける。
ジュウジュウという音が、生まれては掠れ、澄んだ空気に溶けていく。

食パン2枚に、炙ったベーコンと細切りのピーマン、チーズをはさんでマヨネーズを適量。
あとは2つの鉄板でプレスし、焦がさぬように待つ。
ほどなくして、コッヘルの方からもボコボコと音が鳴り始めたので、
茶色の粉末を入れたサーモマグに、できたてのお湯を注いでやる。
立ち上る湯気が、太陽の光と重なって目に眩しい。
ホットサンドと苦めのカフェラテ、これが今日の昼食だ。

上出来の焦げ目に嬉しい一瞥をくれながら、かぶりつく。
外はカリカリ、中は重たく脂身の効いたジューシーな食感に思わず舌鼓を打つ。
こうして口内を幸福で満たしながら閑やかな景色を眺めていると、
日常の喧騒など不思議とどうでもよくなってくる。

憔悴しながらも迫りくる幾つもの納期と格闘していた、波瀾の年の瀬が遠い昔のようだ。
これでもかと企画を練り、慌ただしく進めた撮影がようやく終わったかと思えば、
今度はひたすらパソコンの前でウンウンと頭を悩ませ、
「あーでもない、こーでもない」を繰り返す編集作業。
映像を作るということは、なかなかに無慈悲で、途方もない作業である。
十数年前、まさか自分がこんな職に就くことになろうとは夢にも思っていなかった。

パララララ、と風に頁をいたずらされたところで本を閉じる。
銀色の皿にはパンくずが不規則に散らばり、
鉄板にへばり付いた油には、先ほどにも増して色味を濃くした光が反射している。
昇りきった太陽は、大地に別れを告げるようにゆっくりと傾いていく。
ああ、じきに陽が暮れる。
日没後はグッと寒くなるから、ぼちぼち焚き火でも始めようか。

パキパキと地面を踏み鳴らし、周囲を散策する。
こうして少し歩き回るだけで、火種に使えそうな小柄な枝は案外すぐに見つかるものだ。

黒い収納袋に押し込められた金属製のアイテムを取り出し、
4本の脚を開いて、組み立てる。
シルバーのフレームが実に格好良い。
これで焚き火ができる上に、その上に金網を乗せれば、食材をグリルすることもできる。
お気に入りのメーカーの焚き火台だが、そこそこ値が張るので、
ショッピングカートに入れては、削除する、をずいぶんと繰り返した気がする。
しかし、こうやって実物を目の前にすると、
そんなにわかの躊躇がいかに陳腐だったか思い知らされる。
人間にとって“自らのテンションを昂らせること”はとても重要な事である。
それは、これまでの人生を歩む中で刷り込まれた、偉大なる教訓だ。

思えば、大学時代はよく部活の仲間と、向こう見ずなドライブへ繰り出したものだ。
深夜1時頃。2〜3台で連なりアジトを飛び出す。
夜の国道は空いていて、とても快適だった。峠道もよく走った。
巧みなハンドル捌きとギアチェンジが物を言うヘアピンカーブの坂道には、
いつ挑んでもゾクゾクした。
どこに通じているのか分からない、獣道のような暗がりに車を潜り込ませるのが好きだった。
冬場は、部活で購入したヒートテック仕様のセットアップが大いに役に立った。
いつも大体、日が昇るまで好奇心の赴くままに皆で時間を共にし、そして。
朝方、眠たい眼をこすりながらそれぞれが帰路につくのだった。
無鉄砲なアウトドアの精神は、ひょっとしたらあそこで培われたのかもしれない。

辺りはすっかり暗くなり、そこかしこに温かな人工の光が漏れ出している。
山中湖有数のスポットという事もあり、
他にも多くのキャンパーたちが羽を伸ばしているようだ。
所によっては、きっと薪ストーブを設置しているのだろう、
天へと伸びる銀の筒からはもくもくと煙が吐き出されている。
現在、マイナス5℃。
こちらも、本格的に夜支度を始めなければ。
地面に金属ポールを突き刺し、ランタンを吊す。
まばゆく辺りを照らす電球色の灯りと、勢いよく火花を散らす朱い炎が、
瞬時に夜の湖畔を一際色気のある空間へと変貌させる。

パチパチッ。ジュウジュウ。
至近距離で鼓膜と胃袋に訴えかける、実に耳触りの良い音色。
網の上では、身を捩らせながら油を噴き出す肉塊がジリジリと炙られている。
そして、手にはキンキンに冷えた缶ビール。
大きめのシェラカップによそったバターチキンカレーからも、フワッと芳しい湯気が上る。
「― いただきます」

肉を焼いては口に運び、酒を流し込み、思い出したように薪をくべる。
今夜はとことんしっぽり、いこうじゃないか。
もう少ししたら、すぐ近くにある温泉へ凍えた身体を癒しにいくのもいい。
ふと空を見上げれば、この尊い時間を祝福しているかのように
たくさんの星々が燦然と光を放っていた。


そんな、キャンプをするはずだった。
現実は、決して甘くはない。

初めてのソロキャンプ。
東京から山梨へ向かう高速道路は、帰省シーズンだからか超絶怒涛に混んでいて、
河口湖ICを降りる頃には予定より3時間もオーバーしていた。
買い出しのために途中で寄ったスーパーは、
店内が多くのファミリー層で激混みな上に、レジも長蛇の列。
こちとら1泊分の微々たる食料しか買わないのに…
やっとの思いでキャンプ場に到着するも、時間はゆうに15時を回っていた。
(予定していたチェックインは12時)
日没まではあと2時間ばかりしかない。

いそいそと自分の区画に車から荷物を下ろしていると、
キャンプにおいてはこと肝心の、
サバイバルナイフ・ハンマー・チャッカマンを忘れてきた事に気がついた。
ちゃんと玄関先に出しておいたのに…
近くのホームセンターへは、車を飛ばしてもざっと20分はかかる。
これでは焚き火は愚か、テントにペグダウンする事もままならない。
仕方なく、管理棟でそれらを無駄にレンタルした。チャリーン。
チャッカマンも買った。チャリンチャリーン。

そうこうしている間に辺りはどんどん陰っていく。
目の前の美しい湖に惚けている人たちを横目に、すぐさまテントの設営に取りかかった。
もちろん、テントを張るのは今回が初めて。
ソロ用のワンタッチ式とはいえ、慣れていないのでなかなか思うように進まない。
細かい作業ともなると手袋をしたままでは難しいので、途中からは素手。気温はマイナス。
どんどん感覚を失っていく指どもを酷使し、お金を払って借りたハンマーで、
寒さに気圧され自然と垂れてきた鼻水をすすりながら、ペグの頭を打った。

なんとかテントは張れたものの、いよいよ暖をとらねば本気で凍え死んでしまう。
管理棟で買った薪を、管理棟でレンタルした斧で細断。
火を起こした頃にはもう、とっぷりと日が暮れていた。
しかし、焚き火だけではベース全体が明るくならないので、
ランタンを取り出してテーブルに置いてみる。
……。確かに明るいが、それはあくまでテーブルの上だけで、
焚き火の方までは全然光が届いていない。
そう、広範囲を照らすにはランタンを上から吊す必要がある。
しまった、ランタンを吊すポールがない。
出発の数日前、まぁなくてもなんとかなるだろとショッピングカートから外した、
まさにそれが今必要だった。

もういい、とにかく腹が減った。
東京を出る前、朝9時ぐらいにスタバで食べたワッフル以来、何も口に入れていない。
湯煎をするべく水を張ったコッヘルを10分近くバーナーで炙ってみるが、
寒すぎるのか一向に沸騰する気配がない。
実は、この時のためにと買った無印良品のカレーパウチを楽しみに持ってきたのだが…
サクッと一人分の米をクッカーで炊き、温めたカレーを上からかけるだけで完成する、
実にお手軽なキャンプ飯ですらまともに作れそうにない。

やめ。カレーはもうやめ。
とりあえず肉だけでも焼こう。沸いたお湯は湯たんぽにでも使えばいい。
焚き火の上に網をかぶせ、パック詰めされた肉を取り出す。
周りはすっかり暗くなり、まさに一寸先は闇状態である。目立つ外灯もない。
気を取り直して、まずは軽く豚トロから。
外装のラップを破り、2〜3枚網の上に乗せ、アルミ皿にタレを注いでいると、
あれ?焚き火の火力がどんどん落ちているじゃないの。
何だよ、もう下火になっちゃうの? ああもう、薪、薪!
再度手袋をはめて、何本か薪をつかみ、くべる。
よし、こんなもんでいいか。
改めて椅子に腰を下ろすと、座面が凍てつくような温度にまで下がっていた。冷てぇ。
どれ、早速豚トロを… ん?待て、これ、ちゃんと焼けてんのか?
暗すぎて焼き加減が全く分からない。
なんか雰囲気カリッとしてるし、まぁいけるだろ。
とりあえずタレ皿に移して。あっと、酒を出してなかった。
肉を喰らうのに酒がないのは言語道断、タブーである。
(大学の新歓BBQで誰もが学ぶ心得)
よかった!ビールはキンキンに冷えている、と顔を綻ばせたのも束の間。
満を辞して口に放り込んだ豚トロ、何とこいつもこの短時間でキンキンに冷えていた…
(なんならまあまあ焦げていた)
そして、ビールをグイッと一口あおる頃には
また焚き火がしょぼくれた感じになっているのだった。
以降、肉を網に乗せる→薪をくべる→焼けたか分からない肉をタレ皿に入れる→火加減を調節する→肉を食べてみる→冷たいし焦げてる、の繰り返し。
(お昼に作って食べようと思っていたホットサンドの食材たちは、
その先もずっとクーラーボックスの中で眠っていた)

当然ながら、星を眺める余裕など微塵もなかったし、本を読む時間もなかった。
意図した料理も作れなかったし、温泉にも入れなかった。
慣れない事にいちいち手こずって、全くもって思うようにいかなかった初めての試み。
しかし。
「人生、常に心惹かれる事をやっていたい」
そのマインドは、なんだか今も昔も変わらないなとぼんやり思った、2021年暮れのできごと。

というわけで、ご挨拶が遅くなりましたが、
硬式庭球部で4年間同じ釜の飯を食った同輩・武田君からバトンを受け取りました、
2011年卒の佐藤初好と申します。
彼とはテニス以外のところでもいろいろとウマが合って、結構な時間を共に過ごしたように思います。
(死相がチラつくようなドライブにもたくさん行きました)
今回、こういう機会を与えてくれて大変感謝しています。

そして次のバトンは、硬式庭球部の後輩であり、大学時代にアルバイトをしていた塾の教え子でもある鈴木楓さんにお渡ししたいと思います。
高校時代からすごく頑張り屋さんで、大学にもしっかり現役で合格。
その後、私の口車にまんまと乗せられて硬式庭球部に入部し、
4年間折れずに駆け抜けてくれた自慢の後輩ちゃんです。張り切って頼みますね!

(東京都世田谷区在住)

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