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『女、30代半ばの決断』
                                      佐賀あさみ 1988年卒

 専業主婦暦 7年。しばらく前から、「パート募集」の張り紙が気になるようになってはきた
ものの特に動きもなく、毎日を過ごしている。私の身近には、専業主婦の友人があまりいな
い。

 ある日、数少ない専業主婦仲間が、4月から看護専門学校に通い、看護婦を目指すと
言った。受験勉強をしていることも全く知らなかった…。昨年、別の専業主婦仲間から、
保育士試験に向けて勉強するとこっそり打ち明けられたことも思い出した。日々、目先の
ことのみ考えて暮らしている短期展望型の私もその日は「人生について」考えてしまった。
来年の自分のことでさえ、学校完全5日制ほども考えたことがなかったかもしれない。

 「私の人生、このままでいいのか…。何か見つけないとだめなのか…。」 挙句の果てには、
「学生時代にもっと勉強しておけば、人生違っていたかな…。」なんてことが頭の中をグル
グルと回っていた。当然、すぐには答えは見つからない。特別、何かを期待したわけでもな
いが、わが伴侶に「私、このままでいいのかな?」と訊ねてみた。「いいんじゃないの。」とサ
ラリ。「そんな歳なんだから、本当にやりたいと思うことじゃないと続かないよ。やりたいこと、
あるの?」とグサリ。たしかに友人たちもこの歳で白衣の天使や、子供たちに囲まれてピア
ノを弾いている自分の姿への憧れだけで決断したわけではないと思う。少なくとも、二十歳
前後の普通の新人よりは、その大変さをわかっているだろうし…。

 そういえば、昨年末、元同僚たちの退職の話をいくつか聞いた。その当時、私は、出産、
育児を理由に退職しためずらしい女子社員だった。同じ時期に、妊婦だった同僚たちは誰
も辞めなかったし、私より先に母となった同期入社の友人たちも皆、仕事を続けていた。
休日も多くはないし、勤務時間もそんなに融通を利かしてくれるわけでもない職場で、
彼女たちは子供を保育園に預けて、頑張っていた。更なる活躍の場を探すためなのか、
しばらく充電のためなのかわからないけれど、年賀状には「いろいろ考えて…」
と書かれていた。

 30代半ば、友人たちの決断にエールを送りながら、私もささやかな決断をした。
化粧品をちょっとだけ高価なものに変えてみよう。
そして、たまには、人生について考えみようかな。
答えはなかなか出そうにないけれど、先月、このコーナーに登場の谷氏に「それも、
幸せってことなんじゃないの。」と言われたら、すっかり良い気分になったしなぁ〜。

 さて、来月は、川原井陽一・典子夫妻にお願いしました。お二人とも、高経大OBです。