「”憧れ”を大切に」
2008年卒 今野 健史
英語研究部(E.S.S.)の後輩からバトンを託されました。161回目のリレー随想を担当させていただく今野健史です。現在は地元である岩手県奥州市というところで、中学校で英語科の教員として働いています。
大学の先輩や後輩に、学校の先生をしていることを告げると、よく「社会科ではないのか」と聞かれます。私の場合、学生時代に教員免許を取っておらず、社会人になってから教員の道を志したこともあり、大学でサークル活動していた英語科で免許を取ろうと決めました。新卒で入った会社を4年で辞め、学生に戻って約3年、ようやく免許を取得できました。同時に地元岩手の教員採用試験にも合格し、去年から奥州市の中学校で働いています。このように紆余曲折があったため、「社会人○年目になりました」とすぐには出てこないのが困りものです。
こうして無事に教員になることができたのですが、今こうして学校現場で働いていることを、時々不思議に思うことがあります。そして「夢は変わるものだなぁ」としみじみ思います。
私が中学生だった頃、この職業にだけは就かないだろうと決めていた仕事がありました。それは「中学校の先生」でした。はっきりと将来の夢があったわけではありませんが「学校の先生だけは絶対にやらない」そう思っていました。元気いっぱいの中学生を相手に、毎日指導に明け暮れるも、素直にいかないのが中学生。気持ちを込めて叱っても、言えば言うほど嫌われていく…。子どもながらに「こんな割に合わない仕事はないな」なんて思っていたのです。
そんなことを思っていたのに、今自分がその仕事に就いているのだから驚きです。2011年の震災の後、地元に帰って何かをしたいと思うようになったこと。サークルの後輩の成長を見て、人を育てる仕事に魅力を感じたこと。ずっと好きで勉強を続けていた英語。いろんな要素がちょうど重なって、現在の選択につながったのかなと思っています。”Connecting the Dots”を、少しだけ自分なりに感じています。
昨年は1年目だったので、初任者研修というものがありました。その年の採用者が一同に集まっての研修なのですが、その研修を担当していたのが、なんと私の中学2・3年の担任の恩師でした。成人式以来の再会で、約10年ぶり。教員を目指していることや、試験に合格した時も報告はしていたのですが、会って報告することができ、昔の話をできたのはとても幸せでした。「まさかお前が先生になるなんて」とも言われましたが、「本当にそうです」と笑って返しました。
絶対にならないと決めていた職業に今就いているのですから、人生わからない…。いま生徒たちに思うのは「夢は変わっていい。でも今、その時の”憧れ”を大切にしてほしい」ということです。行きたい高校、将来の職業、チャレンジしたいこと。何でもいいのですが、心の中にある”憧れ”が一番エネルギーを引き出してくれるのかなと感じています。それをひとりひとりが見つけられるように、日々生徒たちと関わっていきたいと思っています。
スタートラインに立って2年目。まだまだ苦労も多いですが、何年後か、いつか教え子たちと昔話ができる日を夢見てがんばっていきます。