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「業界どっぷり45年」

                                 1970年卒 平野憲一

  1970年卒の68歳。同期の友人千葉経済大学藤森友明教授に頼まれて、たすきを受け取りました。現役売れっ子タレント(藤森氏・笑い)です。

 卒業と同時に証券界に入って、今までどっぷり45年です。証券会社の執行役員、顧問を経て昨年67歳で個人事務所を作って独立しました。ありがたい事に、たくさんの業界内外の友人たちが協力してくれました。独立の事も、日本経済新聞社が、人事欄では無く一般経済ニュースとして報道してくれました。月刊投資手帖(日本株式新聞社)が無償で東京事務所として編集室を提供してくれました。日本証券新聞社は毎週の私のコラムを作ってくれました。東洋経済オンラインも連載コラムを設定してくれました。20年近く出演していて知名度を確立してくれたラジオニッケイは、組織を抜けて一匹狼になった私を引き続き使ってくれました。東京MXテレビも同様です。同業他社であった水戸証券さんにおいては、自社の講演会の講師として毎季の催しに呼んで頂いています。その他たくさんの方からのご好意で、個人事務所維持の資金的見通しが立ったので、好きな執筆・講演等をしながら、ゆっくり、お世話になった方々への恩返しの仕事が出来たらいいなと思っていました。ところが、時々ゲスト出演していた、CS経済専門チャンネル日経CNBCテレビからコメンテーター就任を依頼されました。就任したら他所出演等の制限があるので、「お世話になった方々との仕事を断るわけにはいかない」としたところ、「これからの新しい仕事はともかく、今までの付き合いはそのままで良いので、是非」という事で、引き受ける事になりました。今までの仕事もあるのに、そのほかに週4日も拘束されることになり、原稿の締め切りに追われる(流行作家?)忙しい毎日に変わりました。友人たちに体の事を心配されています。しかし、好きな株評論の仕事であるし、週4日拘束されると言っても、朝のラッシュの後に出勤し、夕方のラッシュの前に帰れるので、68歳の体でもそれほど疲れません。それに人気はいつまで続くものではないし(芸人?)と思って、今を充実して過ごしています。

 さて、この様な人生を送る事になったきっかっけは、50年前、経大一年生の時でした。NHKニュースで、清水一行著「小説兜町(しま)」が売れていると報道されていたので、証券研究部で株の研究をしていたこともあり、興味本位で読んで見たら、衝撃を受けました。元日興証券株式部長をモデルにした相場小説でしたが、その主人公にほれ込んでしまったのです。個人情報保護の今では信じられない事ですが、本に作者の住所が書いてありましたので、(若かったので行動力があったのでしょう)高崎から東京練馬の清水氏の自宅を訪ねて行きました。しかも、主人公に合わせてくれと談判に行ったのです。さすがに向こうも変な奴が来たと思ったでしょうが、「フィクションだから主人公は実在しないよ」と笑いながら対応してくれました。以来4年間、書生気取りで時々おじゃましてお話を聞いたり、銀座の高級クラブに連れて行ってもらったりしました。就職も、相場の神様と言われていた石井久氏が創業した立花証券が面白いよと、紹介状を書いてくれました。その後も清水先生には、お客さんになってくれたり、娘の名づけ親をお願いしたり、公私ともにお世話になりました。先般お亡くなりになりましたが、奥様と遺影(大きなイラスト画)の前で、コーヒーを飲みながらしみじみ昔話をしました。 本当に、色々な方にお世話になりました。心から感謝です。

 もう一人の師であり、93歳でご健在な「相場の神様」石井久氏から「針の落ちる音を聞け」と教わりました。世の中のわずかな変化に気づけという事ですが、私の聴力(能力)そのものや、聞いた音に対する判断力が、年相応に鈍ってきているのが残念です。しかし、先日、名古屋証券取引所主催の講演会に講師で行ったところ、ファンだと言う方から、スマホ(本体に)にサインしてくれと頼まれました。この様な方がいるうちは、もう少し頑張ろうと思っています。

 また、現在同期の元富士ゼロックスの石橋君や藤森教授が世話人で、70年卒の仲間を中心(他の年代の方歓迎)に、ゴロの同じ「三船会」を作っています。千葉県船橋市に集まれる仲間数人で始まりましたが、出席者の便宜を図る為、今は東京(浜松町)で、三か月に一度のペースで開いています。最初は唯の飲み会でしたが、その内それぞれの過ごして来た業界の事や、趣味の事を発表するようになりました。これがすごく勉強になり、楽しいひと時になっています。この環境がいつまで続くか分かりませんが、残りの人生を楽しみたいと思っています。因みに、残りの人生のモットーを最近決めました。「人と争わない事。止むを得ず争う事になったら勝たない事。」です。次回は同期の須藤氏です。