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1978年卒 宇都宮 徳久
「ロンドンオリンピックで思い至ったこと」
119番目を担当することになった1978年卒の宇都宮徳久です。7月の東京三扇会幹事会で北島副会長から声を掛けられ断る理由が思いつかず引き受けることになりました。ところで「随想って何?」と思い調べてみると「折にふれて思うこと」だそうで、今思っていることを何でも書けば良いようです。
さて、この原稿を書いているのは2012年8月上旬ロンドンオリンピックも終盤です。男女サッカーが幸先よく勝ち高校生スイマーが予想外のメダルを取った一方で、柔道は苦戦しあの北島選手は3連覇を逸しました。なでしこジャパンが女子サッカーで史上初めてメダルを取った一方、男子は健闘及ばずメダルに届きませんでした。一喜一憂、オリンピックのせいで睡眠不足の毎日です。
メダルを取り栄光を掴む選手がいる一方、思い通りの成果が出せない選手も大勢います。血のにじむような練習をしてきても本番のその一瞬に練習通りの実力が出せない選手はくやしい限りでしょう。例えば男子体操、団体の金メダルは確実といわれていたのにミスが続き銀メダルに終わってしまいました。
競技終了後に選手達が流す涙は何でしょうか。勝って流す嬉し涙、負けて流す悔し涙、やりきった充実感で流す涙、実力を出し切れなかった後悔の涙・・・
国を代表して参加する選手にとって最も喜ばしい涙は何でしょうか?もちろんメダルを勝ち取り流す嬉し涙に違いありません。ただ、それを望めるのは一握りの者だけです。自分の持てる力を100%発揮できた時、つまり自分との戦いに勝った時に流す達成感の涙こそ喜びの涙ではないかと思うんです。
水泳の選手が目標を聞かれると、よく「ベストを出すこと」と言っています。最高の舞台で、仮にメダルに手が届かなかったとしても昨日までの自分を超えること、それこそがアスリートの最高の喜びではないでしょうか。
ゲームもレースも、必ず相手がいます。自分自身は制御できても相手はコントロールできません。まずは自分の実力を最大限発揮する、言いかえると自分の仕事をきっちりこなすことが肝心なのだと思います。アーチェリーで銀メダルを取った選手曰く、コーチから「ここぞという時にこそ力を抜け!」と。日々厳しい練習を積み重ねた上で本番では肩の力を抜いて臨む。無我の境地という言葉がありますが、まさにそんな時にすばらしい成果が残せるのでしょう。
勝利に向かって戦う真摯な姿は観る者に感動を与えてくれます。元気と勇気を与えてくれます。ビールを飲みながらオリンピックを観る。甲子園球児達の熱い戦いを応援する。そんな至福の胸躍る8月はあっという間に過ぎていきます。
次号120番目は、1972年卒の今憲行先輩です。
以上