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                                1996年卒業 角田 大輔

『働くって何だろう?』

 長谷川君から86人目のランナーに指名されました、96年卒の角田大輔と申します。学生時代は経済研究部と美術部に所属し、ゼミは鈴木秀一ゼミ(現在は立教大学経営学部でご活躍されています)でした。

 私は大学に入学して初めて自分で働いてお金をもらう体験をしました。最初のアルバイト先は高崎駅前の居酒屋さんでした。店長さんから初めてアルバイト代をもらったときは震えるほど嬉しかったことを覚えています。そして、働くことがお金以外にも沢山の事柄を自分にもたらしてくれることを実感したのもこの時でした。お勘定の時のお客さんの笑顔や厨房での地味な仕事の大切さ、そして閉店後に一升瓶から茶碗酒を注がれながら伺う店長さんの経営哲学、これからが作り出す小さな世界から私は多くのことを訓えて頂きました。

 その後も卒業まで良く働きました。結婚式場や病院事務などで働かせて頂いた時は、日常とかけ離れた世界だからこそ、様々な人生劇場が開かれる様子を目の当たりにしました。一人の人間の人生にとてもたくさんの家族や友人達が関わっているという至極当たり前の事実に改めて気づかされました。ゼミの調査のために三重県のタイヤ工場で日系ブラジル人と一緒に働いた時は、彼らが見知らぬ土地で厳しいながらも楽しそうに働く姿をとても眩しく感じました。

 卒業後は、東京で人材サービスの会社に入社しました。学生時代に研究していた日系企業のダイバシティ(多様性)を推進することに貢献したいとの志から未知の世界への挑戦でした。想像以上に早いスピードで変化していくクライアント企業の姿に驚きながらも、年齢や性別に関わらず仕事で関わる人達の多くがご自身を成長させるために働いているという事実に大いに刺激を受けました。私自身も海外赴任や新規事業の立上げの経験を通して、微力ではありましたがクライアント企業の組織変革や成長のために働く人々のお手伝いが少しはできたのかなと思っています。

 数年前に転職を経験して現在は、外資系のコンサルティング会社に勤務しています。企業組織と働く人々をリードする経営戦略や人事戦略の立案や実行のお手伝いをしています。様々な企業のお手伝いを通して、こらからの会社組織と働く人々の関係がどのようにあるべきかについて思いを馳せることが益々多くなってきています。

 バブル崩壊後、多くの日系企業では組織と個人をつなぐ経営思想の重心が"家族"的関係から"契約"的関係へと急速に変化しています。多くの日本人が"個"として自律することを急速に迫られており、そのなかで不安や寂寥感を感じる人々も少なくありません。一方でリーマン・ショックを経験した欧米企業や欧州系企業は、既に景気回復後を睨んでおり、グローバルレベルでの"組織"のビジョンやミッションの共有化を進めようという努力が進められています。そして、中国やインドなどの新興諸国では、組織と個人の成長が質・量ともに加速度的に進んでいます。
 それぞれの地域で変化の流れは異なっていますが、各国の共通項は、グローバル競争時代における「組織としてのサバイバル」と「優秀人材の獲得と引留め」にあるように感じています。多くの日本企業と日本人もこの大きな2つ根源的なテーマを抱えながら日々活躍されているのではないでしょうか?
翻って、私自身はそのテーマの向こう側にどのような世界を想い描いて走ればいいのでしょうか? 先週、息子の幼稚園仲間のパパ達とお酒を飲んでいるときに、子供達の将来の働き方が話題になりました。家族によって意見は様々でしたが「子供達が職人さんになろうが会社員になろうが、彼らの世代は、世界中のどこで働くことになるかわからないなぁ」という思いで一致していました。親としては子供達が遠くに行ってしまうことは寂しい限りです。しかし、彼らが将来、言葉や文化の異なる人達とひとつの志を共有して、素敵なチームの一員として活き活きと働く姿を想像することは、とても楽しみでもあります。息子達が活躍する未来の世界が少しでも魅力的なものになるように、私達の世代が頑張って行かなくちゃならないんだなぁと改めて考えさせられました。

 高崎経済大学での5年間(勉強が好きでちょっと長くなりました(笑))は、素敵な出会いに溢れていました。若くて優秀な先生方は、決して研究に有利とは思われない土地柄にも関わらず根気強くご指導下さりました。アルバイト先の経営者の方々は、未熟なくせに生意気な学生に手を焼きながらも何とか働かせてくれ、そればかりかアルバイト料まで払ってい下さいました。そして多くの同級生や先輩・後輩には朝まで楽しく飲み・しゃべり続けることに付き合ってもらえました。

 卒業してから、次々とやって来る困難にも勇気をもって立ち向かえたり、忙しい中でも小さな出会いの機会を大切に思えたりできたのも、学生時代に皆さんとの出会いがあったからこそだと感謝しています。この場を借りて改めて、"ありがとうございました!"とお礼を述べさせて頂きます。そしてこれからも宜しくお願い申し上げます!!
 次回は、鈴木ゼミの先輩でもあり私の人生の節目には良きコーチ兼メンターとして貴重なアドバイスを頂戴している岩さんにバトンタッチしたいと思います。岩先輩、どうぞ宜しくお願いします。
<<以上おわり>>