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「13年目の奇跡?」
                        1990年卒 泉浩之

 高経大を卒業してから13年目に突入し既に半年が過ぎた。恐ろしい話だ。
この間に東京→横浜→東京→仙台→大阪→東京と転勤を繰り返し、数多くの
人達に怒られ続け(誉められたことも無いではない)、泉は13年前と比べ
て少しは変わったのだろうか?                  
 確かに頭髪は月日の流れに素直に反応し父親そっくりになってきたし、風
呂上りには下腹部にビール腹のサンプルを発見出来る様になった。会社の部
下や同僚に仕事上だけだが偉そうな意見を述べる「ハッタリ」も覚えたし、
上司の命令一つで毎日終電になる生活にも、38℃近い体温に気付かなかった
ことにして、大阪、福岡と出張へ飛び回ることも、まったく疑問に感じなく
なった。それどころか最近ではリストラと書いて、思わず普通のことと読む
位に見事な諦めすら身につけてしまった。13年前の希望に満ち溢れた自分
と比べると悲しい話だが、これが現実だ。
 しかし、泉はこんな環境に「ある意味」とても満足出来ている。それを貧
乏性と言うのか見栄っ張りと言うかは別にして、これは自分が選んだ道な訳
だし、自分の意志でこの道を歩き続けている訳だから、何も(…と言うと嘘
つきになるが)後悔は無い!…と思うことにしている。
しかも…泉にも13年前から、恥ずかしい位変わっていない点が多い。相変
わらず待ち合わせでは相手を待たせるし、飲み会での最初のビールは必ず一
気してしまうし、後輩と遊びに行く時に、せめて2軒目位はご馳走しないと
申し訳ないと思ってしまう(ダメな時は思わず謝るし、「え?いいですよ!」
なんて言われると何ていい人なんだろう!と思ってしまう)。
 そして、こんな泉には13年前から今日迄親しく付き合ってくれる友達が
数多く居る。数年振りでも昨日の続きの様に会話が出来る、お互いの顔色だ
けで全部感じあえる彼らが居る。そんな彼らと卒業以来の付き合いが続いて
いる…それだけで十分に幸せだし、当分この幸せが続くことは某経済評論家
が語る日本経済の先行き予想より遥かに確実な事実だ…と思う。
 そう、泉には「素晴らしい彼ら」が居る。13年前に比べると侘しい位に
縮んだが、夢も希望もある。ストレス一杯、不満一杯、でも給料は少しの今
の仕事に自分なりの自信と誇りを持っている。これを「奇跡」と言わずして
何と言うのだろう…と最近ホント思っている。
 あ!その代わりと言っては何だが、「結婚」と言う幸せにはまったく縁遠
いまま(色々ドラマはあったが、ハッピーエンドにならなかっただけ)、1
3年も過ごしてしまったが………でも、泉は幸せだ。

:同じく平成2年3月に卒業した幸せ者:緑川千征君に次回の執筆は任せま
す。彼なら必ず皆さんを3回は笑わせてくれる…と信じて。